基礎理論ノート

太陽物理学のための基礎理論をまとめたノートを公開しています。まだ未執筆の項も多いですが、逐次内容を更新していく予定です。

PDFで開く
  • バージョン:ver. 0.03
  • ページ数:591
  • ファイル容量:8.6 MB
  • クリックすると別タブで開くか、ダウンロードしようとします。

まえがき

本書は、太陽物理学に興味のある筆者が、これまでに勉強した基礎理論を忘備録としてまとめたノートである。一部、大学在籍時の授業ノートも基にしている。

本書の主題である磁気流体力学(電磁流体力学; Magnetohydrodynamics, MHD) は、電気伝導性のある流体のダイナミクスを記述する理論である。例えば、融解した金属、地球の外核などの液体や、核融合炉、太陽などのプラズマ(電離した気体) を考えるときに使われる。宇宙に存在する普通の物質の殆どはプラズマの状態で存在しているため、MHD は様々な天体の物理を考える際の基本的な道具のひとつである。本書では、太陽物理学の文献を読む際に必要になるかもしれない、あるいはならないかもしれない理論を、MHD を軸にした文脈で雑多に説明する。高校数学(微分積分、行列の計算、複素数の計算) と高校物理・化学(力学、電磁場の基本法則、理想気体の熱力学、波、原子や分子の基本構造) に加え、大学初年度の数学(広義積分、テイラー展開、線形空間の考え方) と物理(力学と簡単な常微分方程式の解き方、電磁気学) 等の知識があれば、とりあえずのところ読み進められると思われる。

  1. 高校数学習得者程度の知識量を想定して、本書で使用する数学的事項と流体力学の基本的な考え方を簡単に説明する。
  2. 電磁気学に関する事柄を説明しつつ、それを流体に適用できる形に応用する。
  3. 流体力学の諸法則について説明する。
  4. 基礎方程式から導かれる MHD 流体の性質や考え方について、よく目にすると思われるものをピックアップする。
  5. 高温のプラズマを考える際にMHD 方程式系に加えて必要な概念である、放射輸送の考え方について説明する。
  6. プラズマを特徴づける諸パラメータについて説明した後、MHD の適用限界として、希薄なプラズマを考える場合に使われるプラズマ運動論と呼ばれる考え方について概観し、運動論からの知見を踏まえたMHD の考察や補正について説明する。
  7. 相対論について基本から説明した後、3+1 形式による相対論的MHD の定式化を説明し、非相対論的MHD と比較する。

第 4 章以降の各章は互いの関連性が密ではないため、どの章から読んでも全体として読み進められる。

磁気流体力学やプラズマ物理は様々な基礎物理学の分野から得られる知見を結集して構成される。よって、それらを理解するには自ずと各分野の知識が必要になる。各章の最後に付録として大学物理の基礎知識をまとめた。具体的には次の通りである。

  1. 第 2 章の付録 電磁波についての基礎知識
  2. 第 3 章の付録 熱力学、統計力学の基礎知識
  3. 第 5 章の付録 解析力学、量子力学の基礎知識

付録でまとめた知識を使う際には付録を参照している。また、所々にトピックと称した節を設け、本書で説明した知識の現実の系への応用例を紹介するつもりである。

本書は太陽物理学への応用を念頭に置いている。よって、理想気体として考えられる水素プラズマの話が多い。この分野は、入門的知識を持ち合わせていれば英語の教科書や論文などで知識を増やしていけるが、そこまで到達するのが、特に大学でこの分野の教育を受けていない方にとっては敷居が高いだろうと感じる。研究経験の乏しい筆者が書き連ねた文章を公開することが学術的にどれほど有用か、あるいは迷惑行為なのかは分からない。しかし、学べる大学も少ないと思われるこの分野に関する疑問を抱いた方にとって、検索のための糸口となる情報が少しでも(日本語で) 示せればと思い公開した。この分野の研究をしたい方が本書だけで済ますのはリスクが伴うが、参考文献もなるべく示すように努めたので、学習の指針になれば幸いである。

更新履歴

  1. ver. 0.01 2021 年 9 月 16 日に公開。
  2. ver. 0.02 2022 年 6 月 10 日に公開。誤字・マイナーな間違いを修正。
  3. ver. 0.03 2022 年 6 月 19 日に公開。誤字・マイナーな間違いを修正。

その他の創作物

その他、このページ に、過去に作ったものを雑多に置いておきます。

このページをシェアする

ご支援をお願いします。