宇宙からの観測

公開日:2021 年 1 月 22 日
最終更新日 更新履歴
2021 年 3 月 23 日:画像を切り替えられる機能を追加
2021 年 1 月 22 日:公開
:2021 年 3 月 23 日

例えば太陽フレアや太陽風に関する情報など、観測装置を地球の外に持ち出さなければ得られない情報はたくさんあります。現在活躍している太陽観測衛星や探査機の特徴を紹介します。

宇宙からの観測

記事「地上からの観測 1:世界の太陽望遠鏡」では、地上の望遠鏡での観測について説明していますが、現在は観測衛星や探査機を用いた宇宙からの太陽観測も行われています。

現在、6 機 ( + α ) の観測機が宇宙空間で望遠鏡を太陽に向け、地上からでは得られないデータを得ています。それらのデータはこのサイトの他の記事で度々紹介しています。望遠鏡を宇宙に持ち出して観測することのメリットは次の通りです。

  • 詳しくは 太陽望遠鏡の記事 で説明しているが、地上からの観測で望遠鏡の分解能を下げてしまう最大の原因は地球大気の揺らぎ (気流) である。望遠鏡を大気の外に持ち出せば、この影響を受けずに、安定して高解像度の観測が行える。
  • 地上だと夜間は太陽観測を行えないが、観測機の軌道によっては、24 時間以上連続して太陽を見続けられる。
  • 太陽が発する 紫外線 脚注 [紫外線]:電磁波 (光) のうち、波長が大体 10 nm から 380 nm の領域のものを紫外線と言います。波長 10 nm 付近 (極端紫外線) にある輝線はしばしばコロナの観測に用いられます。紫外線は地球大気に吸収されるので、宇宙からの観測が必要です。 X 線 脚注 [X 線]:電磁波 (光) のうち、波長が大体 0.01 nm から 10 nm の領域のものを X 線と言います。光子のエネルギーに換算すると、大体 100 eV から 100 keV の領域です。特に、波長 1 nm から 10 nm 程度の光 (軟 X 線) はコロナで発せられ、波長 0.1 nm 以下の光 (硬 X 線) は高エネルギー粒子の加減速によって発せられます。X 線は地球大気に吸収されるので、宇宙からの観測が必要です。 は地球大気に吸収されてしまうため、地上からは捉えることができないが、大気の外ならばこれらの波長域で観測できる。

また、太陽から飛んでくる物質 (太陽風や CME) を宇宙空間で直に捉えて観測する探査機もたくさん打ち上げられています。詳しくはカテゴリ「太陽と地球」内の記事で説明しますが、これらの物質が地球にぶつかると、通信や電力インフラなどに甚大な影響を及ぼす危険があります。宇宙での観測を行うことで、これらの物質に対する理解を深められますし、実際に地球に到来する前に警報を発することも可能になります。

ロケットや気球に観測装置を載せることもあります。例えばロケットで打ち上げて分離された観測装置が弾道を描いている間 (数分間とか)、大気圏外での観測が可能です。これは衛星観測に比べて低コストであるのがメリットです。将来衛星に載せるべき観測装置の開発実験と選定のために行われることもあります。

この記事では、現在活躍している観測衛星や探査機それぞれの特徴を、一部になりますが、紹介します。

高解像度での長時間観測:ひので

日本はこれまでに「ひのとり」「ようこう」「ひので」の 3 つの太陽観測衛星を開発・運用してきました。ようこうは現在では運用が終了していますが、太陽コロナをそれまでにない精度で観測した衛星でした。その観測結果によって、当時 (1990 年代) の研究者は、コロナが思っていたよりも活動的であることを知り、また、当時考えられていたフレアのメカニズムの観測的実証を得ました。ようこうの成果について詳しくは、例えば JAXA/ISAS の広報誌「ISAS ニュース」の No.262 (2003 年 1 月号) にまとまっています。

現在も運用中のひのでは、2006 年に打ち上げられて以来、10 年以上に渡って貴重なデータを取り続けてきました。ひのでは JAXA/ISAS と国立天文台が主体となって開発した衛星です ( Kosugi et al., 2007 )。ひのでには SOT, XRT, EIS と呼ばれる 3 つの望遠鏡が搭載されています ( 図 1 )。それぞれ、 可視光 脚注 [可視光]:電磁波 (光) のうち、波長が大体 380 nm から 780 nm の領域のものを可視光と言います。人間の目が感じることのできる領域です。 、X 線、極端紫外線 (X 線に近い紫外線) の波長域で観測を行う装置です。

図 1   観測衛星ひのでの外観と搭載されている望遠鏡の名称:提供 国立天文台/JAXA

SOT で見た彩層

まず紹介すべきは SOT でしょう。SOT は可視光を観測するための望遠鏡であり ( Tsuneta et al., 2008 )、集光部は JAXA/ISAS と国立天文台、分析装置は NASA とロッキード・マーチン太陽・天体物理学研究所 (LMSAL、米国) によって制作されました。

SOT は 50 cm の口径を持ちます。口径とは望遠鏡 (主鏡) の直径のことです。太陽望遠鏡の記事 で説明していますが、望遠鏡は口径が大きいほど分解能が上がります。SOT の口径は観測衛星に搭載された太陽望遠鏡としては世界最大であり、地球大気の悪影響を受けず、安定して高解像度の観測を行えます。

空間分解能は 0.2 - 0.3 秒角程度です。1 秒角とは 1 度の 3600 分の 1 の角度です。これは太陽表面にある 140 - 210 km 程度の構造を見分けられる能力です。

SOT は特定の波長のみを通すフィルター越しに太陽を撮影します。図 2 に SOT が撮影した太陽の縁の様子を示しました。動画の前半 (青色) は波長 430 nm の光を捉えたもので、太陽表面 ( 光球 脚注 [光球]:フィルターを通さずに可視光で観測したときに明るく映る層のことです。大雑把にはこの層が「太陽表面」と呼ばれます。より細かくは高度 0 から 500 km あたりの層を言います。 ) の様子が写っています。後半 (オレンジ色) は波長 396 nm を捉えたもので、光球の上の 彩層 脚注 [彩層]:太陽大気のうち、高度 500 km から数千 km の層を指します (太陽半径は約 70 万 km)。太陽表面より少しだけ上の領域と考えてください。例えば波長 656.3 nm (Hα 線) や 396 nm (Ca H 線)、 30.4 nm の光などで観測すると見ることができます。 が写っています ( 図の色について 脚注 [図の色]:図に映っている太陽の色は人工的に着けられたものです。惑わされないでください。これらの図は、特定の波長の光だけを通すフィルターを付けた望遠鏡によって撮影されたものであり、要はモノクロ画像です。得られた光の強度を慣習に従った色によって図示しています。 )。

図 2   ひので/SOT が捉えた太陽面の縁付近にある黒点:はじめは波長 430 nm (G バンド)、後半は 396 nm (Ca II H 線) で撮影された映像。撮影日は 2006 年 11 月 20 日。提供 JAXA/ISAS, 国立天文台 ( 国立天文台のサイトに掲載されたこの動画の解説 ).

SOT は彩層の様子を詳細に捉えることに成功し、彩層や プロミネンス 脚注 [プロミネンス]:彩層 (太陽表面、光球の少し上の層) の画像を見たときに、太陽面の縁で表面から高く立ち上った雲のような構造をプロミネンスと言います。その大きさや具体的な形は様々です。太陽面内にあるプロミネンスは暗い構造として写ります。これをフィラメントと言います。 図の提供 GONG/NSO/AURA/NSF. GONG とは AURA と呼ばれる機関が主導するプログラムであり、全世界 6 箇所に同じ観測装置が配置され、常に太陽の安定した情報が得られている。 が活動的な現象に満ち溢れていることを明らかにしました。ひのでが捉えた太陽のダイナミックな姿は ひのでのサイト (国立天文台) で紹介されています。

ひのでの長所のひとつは、天候や昼夜に影響されることなく、高解像度の映像を長時間に渡って撮影できることです。図 3 はひのでが捉えた彩層、光球磁場の様子と、後から紹介する SDO が捉えたコロナの様子を並べた動画です。動画は 4 日間の様子が写っています。このように、ひのでのおかげで、時々刻々と変化する黒点の様子を何日にもわたって詳細に追えるようになりました。

図 3   黒点形成の詳細な様子:(左上) ひので/SOT が波長 396 nm (Ca H 線) で捉えた彩層 (左下) ひので/SOT が観測した光球の磁場構造:白色は手前向きの磁場が存在する領域、黒色は奥向きの磁場が存在する領域、グレーは磁場が弱い領域をそれぞれ表す。提供 JAXA/ISAS, 国立天文台 (右) SDO/AIA が波長 17.1 nm で捉えたコロナ 提供 NASA/SDO and the AIA, EVE, and HMI science teams. (全体) 2011 年 2 月 12 日 10 時から 16 日 11 時までの様子が映っている。

ひのでの軌道:太陽同期軌道

ひのでは地球の周りを回っています。具体的には、高度約 680 km (地球半径の 0.1 倍) を 98 分程度かけて一周しています。常に昼夜の境目の上空を飛んでいるため、一年のほとんどの時間、地球の影に入ることなく太陽を観測し続けられます ( 図 4 )。正確には、夏至と冬至の時期だけは、地球の影に入ってしまう時間帯があります。

図 4   ひのでの軌道

彩層のダイナミクス:IRIS

Interface Region Imaging Spectrograph (IRIS) は 彩層 脚注 [彩層]:太陽大気のうち、高度 500 km から数千 km の層を指します (太陽半径は約 70 万 km)。太陽表面より少しだけ上の領域と考えてください。例えば波長 656.3 nm (Hα 線) や 396 nm (Ca H 線)、 30.4 nm の光などで観測すると見ることができます。 や遷移層 (彩層と コロナ 脚注 [コロナ]:高度数千 km より高層の大気を指します (太陽半径は約 70 万 km)。極端紫外線や X 線で見ることができます。 の間の層) のダイナミクスを調べることに特化した観測衛星です ( De Pontieu et al., 2014 )。組み立てられたときの様子を 図 5 に示しました。NASA の主導で開発され、2013 年にひのでと同様の軌道に投入されました。口径 20 cm の望遠鏡で紫外線域の観測を行います。

図 5   米国、ロッキード・マーチン社の施設で組み立てられた IRIS の外観:提供 NASA/Lockheed Martin.

彩層を 2 次元の動画として捉えれば、観測している構造の上下左右の動きは分かります。しかし、その構造の視線方向の動き、つまり、観測機から見て奥向きに動いているか手前向きに動いているかは分かりません。

IRIS の強みは分光観測を行えることです。分光観測とは、捉えられた光のスペクトル (波長ごとの強度) を観測することです。詳しくは記事「プラズマ診断:太陽を「見る」だけでここまで分かる」で説明していますが、これにより、視線方向の動きを調べることができます。

例えば、ひのでの 2 次元的な撮像観測と IRIS の分光観測を同時に行うことによって、彩層の 3 次元的な動きを調べる研究も行うことができます。例えば JAXA/ISAS のサイトに掲載されている、岡本丈典氏による記事 を読んでみてください。

図 6 に IRIS の観測結果の例を示します。図には、分光観測で得られたスペクトルと各波長で捉えられた太陽の縁の姿が示されています。図の見方についてはキャプションを読んでください。

図 6   いろんな波長で見た太陽の縁:観測衛星 IRIS が太陽の縁を捉えた画像。画像に示された白いバツ印の点におけるスペクトルが右上に表されている。画像はスペクトル上に赤く示した波長で見たときの姿であり、観測波長が変わると違う高度にある物質が写る。画像の色のスケールは、見栄えが良くなるように、波長ごとに変えてある。2020 年 12 月 25 日に撮影された。提供 NASA/LMSAL.

IRIS の兄弟ミッションとして、NASA は過去に TRACE と RHESSI という太陽観測衛星も打ち上げています。TRACE は 1998 年に打ち上げられ、2010 年まで観測を行いました。口径 30 cm の望遠鏡を持ち、 可視光 脚注 [可視光]:電磁波 (光) のうち、波長が大体 380 nm から 780 nm の領域のものを可視光と言います。人間の目が感じることのできる領域です。 紫外線 脚注 [紫外線]:電磁波 (光) のうち、波長が大体 10 nm から 380 nm の領域のものを紫外線と言います。波長 10 nm 付近 (極端紫外線) にある輝線はしばしばコロナの観測に用いられます。紫外線は地球大気に吸収されるので、宇宙からの観測が必要です。 を高分解能で捉えました。太陽の表面とコロナを同時に観測して比較することで、磁場の 3 次元的な構造を探ることが目的でした。

RHESSI は 2002 年に打ち上げられ、2018 年まで観測を行いました。 X 線 脚注 [X 線]:電磁波 (光) のうち、波長が大体 0.01 nm から 10 nm の領域のものを X 線と言います。光子のエネルギーに換算すると、大体 100 eV から 100 keV の領域です。特に、波長 1 nm から 10 nm 程度の光 (軟 X 線) はコロナで発せられ、波長 0.1 nm 以下の光 (硬 X 線) は高エネルギー粒子の加減速によって発せられます。X 線は地球大気に吸収されるので、宇宙からの観測が必要です。 ガンマ線 脚注 [ガンマ線]:電磁波 (光) のうち、波長が大体 \(10^{-12} - 10^{-11}\) m より小さい領域のものをガンマ線と言います。光子のエネルギーに換算すると、大体 100 keV - 1 MeV より大きな領域です。主に高エネルギー粒子の加減速や核反応によって発せられます。 で太陽を撮影すると同時に、この波長域でのスペクトルも測定することができました。太陽フレア時に生成される高エネルギーの粒子の起源を探るのが主な目的でした。

リアルタイムのデータこそ取れなくなりましたが、これらの衛星が過去に観測したデータは大切に保管されており、今も研究者によって解析が行われています。

コロナ観測と日震学:SDO と SOHO

Solar and Heliospheric Observatory (SOHO) は ESA (欧州宇宙機関) と NASA が共同で開発した観測機です。1995 年に打ち上げられた比較的古いものですが、今なお運用中であり、25 年以上に渡ってデータを取り続けています。SOHO は 12 種類の観測装置が搭載されており、太陽内部から コロナ 脚注 [コロナ]:高度数千 km より高層の大気を指します (太陽半径は約 70 万 km)。極端紫外線や X 線で見ることができます。 、太陽風を対象とした様々な観測を行います ( Domingo et al., 1995 )。

図 7   ESA の技術者によって組み立てられている SOHO:提供 SOHO (ESA & NASA).

Solar Dynamics Observatory (SDO) は NASA によって 2010 年に打ち上げられた衛星です。こちらは SOHO の一部の観測装置の高性能版である 3 種類の観測装置を持っています ( 図 8; Pesnell et al., 2012 )。

図 8   SDO の外観と搭載されている機器:提供 NASA/SDO and the AIA, EVE, and HMI science teams.

全球観測

SOHO や SDO は地球から見える太陽全体を常時モニタリングすることに長けています。例えば SDO の観測装置 AIA (SOHO/EIT の高分解能版) は 10 種類の波長で太陽全球を撮影します ( Lemen et al., 2012 )。そのうちの 6 種類の画像を例として 図 9 に示しました。

図 9   観測衛星 SDO に搭載された装置 AIA が 2011 年 2 月 15 日に 6 種類の波長で撮影したコロナ:ボタンを押すと表示を切り替えられる。 提供 NASA/SDO and the AIA, EVE, and HMI science teams.

AIA の空間分解能は 1.5 秒角です。これは 1000 km 程度の構造を見分けられる能力です。詳しくは記事「スペクトル線:なぜ様々な光で観測するのか?」で説明していますが、それぞれの画像では、コロナの中の異なる温度の物質が明るく写ります。

図のような画像が常に、 12 秒ごとに撮影されているので、地球から見える側の半球ならば、いつ、どこでフレアが起きても観測できます。また、図の 6 種類の画像を用いることで、コロナの温度や密度に関する情報も得られます。詳しくは プラズマ診断の記事 で説明しています。

SOHO のコロナグラフ

SOHO は LASCO と呼ばれるコロナグラフを持っています ( LASCO のサイト , 米国海軍調査研究所 )。コロナグラフとは、太陽本体を円盤で隠して 光球 脚注 [光球]:フィルターを通さずに可視光で観測したときに明るく映る層のことです。大雑把にはこの層が「太陽表面」と呼ばれます。より細かくは高度 0 から 500 km あたりの層を言います。 から来る光を遮断し、コロナを 白色光 脚注 [白色光]:特殊なフィルターを通していない光 (可視光) を撮影したという意味です。 で観測する望遠鏡です。上で紹介した AIA よりも高高度の (太陽表面から離れた) 領域が見えます。

図 10 に LASCO が捉えたフレア発生時の様子を載せます。図の読み方はキャプションを読んでください。

図 10   SOHO に搭載された LASCO と呼ばれる装置が観測した CME: 太陽本体を隠して白色光で撮影したもの。中心に描かれた白い丸が太陽表面の位置を表す。映像の端で太陽中心から太陽半径の約30倍離れている。提供 NASA/ESA, CDAW Data Center and The Catholic University of America in cooperation with the Naval Research Laboratory.

地上からの観測だと、空の明るさ (地球大気で散乱した光) に邪魔されて、ここまで高高度のコロナを観測することはできません。

図の動画にも映っていますが、しばしばフレアが起きるのに伴って、太陽表面付近にあった物質が宇宙空間に向けて吹き飛ばされることがあります。CME (コロナ質量放出) と呼ばれる現象です。詳しくは記事「CME:噴出するプラズマの雲」で説明します。この物質が運悪く地球にぶつかると、通信などに悪影響を及ぼします。

LASCO のようなコロナグラフによって、CME が起きたかどうか、大体どの向きに物質が飛ばされたか (地球に到来する危険はあるのか) をモニタリングすることができます。

日震学への貢献

SDO の観測装置 HMI (SOHO/MDI の高機能版) は複数の波長で太陽全球を撮影することができます。また、光の強度 (明るさ) に加え、偏光状態も測定できます ( Schou et al., 2012 )。

詳しくは プラズマ診断の記事 で説明していますが、これにより、太陽表面の視線速度と磁場の様子をモニタリングすることができます。視線速度とは、観測機に近づく向きに速度を持つか、遠ざかる向きに速度を持つかです。観測結果の例を 図 11 に示します。図の見方についてはキャプションを読んでください。

図 11   SDO/HMI の観測結果の例:(上) 光球の様子。 連続光 脚注 [連続光]:太陽からの光をスペクトル分解 ( = 各波長ごとの強度を表示) すると、周りと比べて強度の弱い波長帯が所々に現れます。これを吸収線と言います。逆に、どの吸収線にも該当しないような波長の光を連続光と言います。 図:太陽光を各波長 (色) ごとに分解したもの。黒く見える波長が吸収線。提供 N.A.Sharp, NOAO/NSO/Kitt Peak FTS/AURA/NSF の強度が示されている。(左下) 太陽表面での磁場の様子。観測機から遠ざかる向き (奥向き) の磁場がある領域が黒、観測機に近づく向き (手前向き) の磁場がある領域が白、磁場の弱い領域がグレーで示されている。(右下) 太陽表面の視線速度の様子。手前向きに速度を持つ領域が黒色、奥向きに速度を持つ領域が白色で示されている。太陽は自転しているので、左半分は手前、右半分は奥向きに動いている。(全体) 2015 年 6 月 20 日に観測された。提供 NASA/SDO and the AIA, EVE, and HMI science teams.

HMI は 日震学 脚注 [日震学]:太陽表面で観測される気体の振動や波を解析することで、太陽内部の圧力や密度、流れの様子などを知ることができます。この手法を日震学と言います。日震学はこれまで、太陽内部の理論モデル (標準太陽モデル) の観測的裏付けを与えた他、太陽内部の自転 (差動回転) の様子も明らかにしました。 に有用なデータを取ることを目的としています。日震学とは、太陽表面で観測される振動の様子から、太陽内部の状態を推定する手法です。地震による揺れを測定して解析を行うと、地下 (地球内部) の様子を調べることができます。その研究手法の太陽版だと思ってください。詳しくは記事「太陽内部を探る日震学」で説明します。

日震学の解析のためには、表面の動きの様子を数分より短い時間間隔で、何年にも渡って安定して観測し続けることが重要です。HMI は 45 秒間隔でデータを撮り続けています。

SDO の軌道:対地同期軌道

SDO は地球の周りを回っています。具体的には、高度 36000 km (地球半径の 5.7 倍) を地球の自転と同じ周期で回っています。地球から離れているのもあり、一年のほとんどの時間、地球の影に入ることなく太陽を見続けられます。更に、地上からの視点だと、図 12 の 8 の字の上空を常に飛んでいるため、観測機との通信を行う基地がひとつで済むことも、この軌道の長所です。

図 12   SDO の軌道の足元が描く 8 の字:提供 NASA/SDO and the AIA, EVE, and HMI science teams.

SOHO の軌道:ハロー軌道

SOHO の軌道は少し特殊です。地球視点だと、ラグランジュ点 (L1) と呼ばれる場所の周りを回っています。地球と太陽の間、地球から約 150 万 km の位置に、太陽の重力と地球の重力の影響が常に相殺されることで、大きな重力を感じない位置が存在します ( 図 13 )。この位置をラグランジュ点と言います。

図 13   地球-太陽間のラグランジュ点 (L1)

SOHO はこのラグランジュ点を中心にして、地球と太陽を結ぶ線に対して垂直に回っています ( 図 14 )。当然、地球の影に入ることはないので、常に太陽を観測できます。

図 14   SOHO の軌道の模式図:ラグランジュ点の周りを回る。

極域の観測:Solar Orbiter

別の方向から太陽を見る

上で紹介した観測機はどれも、太陽系レベルで見たら地球の近傍に位置しています。地球の方角から見ただけでは、2 次元的にしか太陽を観測できないため、例えば CME が発生したときに、その CME が地球側に向かってきているのかどうかを判別できない場合があります。

地球とは違う向きから見ることで太陽を立体的に観察するために、NASA は STEREO-A, STEREO-B と呼ばれる 2 機の観測機を 2006 年に打ち上げました ( Kaiser et al., 2008 )。

両機ともコロナグラフと SDO/AIA に似た観測装置を持っており、太陽の周りを回っています。STEREO-A は地球よりほんの少し内側を回っていて、STEREO-B は外側を回っています。故に両機の地球に対する位置は少しづつずれていきます。STEREO-B は残念ながら、通信が途絶えていますが、STEREO-A は現在も観測を行っています。

ESA も 2020 年に太陽の周りを回る観測機を打ち上げました。その名も Solar Orbiter (SolO) です。SolO は 10 種類の観測装置を搭載しています ( 図 15; Müller et al., 2020 )。短く言うと「全部載せ」で、太陽表面からコロナ、惑星間空間の撮影や太陽風の直接観測など、広い種類の観測を行います。

図 15   Solar Orbiter の外観と搭載装置:提供 Solar Orbiter/ESA & NASA.

2020 年 6 月 20 日時点での地球と STEREO-A, SolO の位置関係図 16 に示しました。SolO は楕円軌道を取っていて、金星の内側にいます。更に、STEREO-A, SDO (地球近傍に位置), SolO のそれぞれがこの日に捉えたコロナの様子を 図 17 に示しました。

図 16   2020 年 6 月 20 日の各惑星と観測機の位置関係
図 17   STEREO-A, SDO, Solar Orbiter がそれぞれ別角度から捉えたコロナ:2020 年 6 月 20 日に撮影された。(STEREO) 装置 EUVI が波長 17.1 nm で観測した。提供 STEREO/SECCHI/EUVI science teams (NASA/NRL/LMSAL). (SDO) 装置 AIA が波長 17.1 nm で観測した。提供 NASA/SDO and the AIA, EVE, and HMI science teams. (SolO) 装置 EUI が波長 17.4 nm で観測した。提供 Solar Orbiter/EUI Team/ESA & NASA; CSL, IAS, MPS, PMOD/WRC, ROB, UCL/MSSL.

この日は 活動領域 脚注 [活動領域]:太陽コロナの画像を見ると、特に明るく光っている領域が存在していることがあります。これを活動領域と言います。活動領域は磁場の強い領域であり、ふもとの太陽表面 (光球) には黒点があります。活動領域以外の領域を静穏領域と言います。コロナの画像で特に暗く見える領域はコロナホールと呼ばれます。 図の提供 NASA/SDO and the AIA, EVE, and HMI science teams. のような目立った特徴が無いので分かりにくいですが、同じ色の丸で囲った特徴を見比べると、それぞれ別の角度から見た画像であることが確認できると思います。

黄道面を離脱せよ

太陽の北極と南極には、そこだけにしか無いタイプの磁場が存在していると考えられています。極域は速い太陽風の発生源でもあります。また、記事「差動回転:回り方がおかしい?」で説明しているように、太陽内部の自転の仕方は大方分かっていますが、極域に関してはまだよく分かっていません。

このように、極域には詳しく調べたい現象がいくつもありますが、地球の公転面 (黄道面) にいる限り、極域は太陽の端っこにしか見えません ( 図 18 )。

図 18   黄道面と極域の関係

ESA と NASA は 1990 年に Ulysses という名前の観測機を打ち上げ、黄道面を離脱して太陽風の観測を行ったことがあります。しかし、この探査機は望遠鏡の類の観測装置を持っていませんでした。つまり、人類は未だに太陽の極域を正面から詳細に見たことがありません。

Solar Orbiter は既述したように、10 種類の観測装置を持って黄道面を離脱しようとしています。2021 年現在はまだ黄道面から離れていませんが、金星で何度もスイングバイすることで徐々に楕円軌道の角度をつけていき、2020 年代後半には、黄道面に対して 30 度程度の角度から極域を観測する予定です。

SolO が予定している軌道の様子を自由な角度から見ることのできるウェブアプリが こちら (ESA のサイト内) にあります。

太陽に接近:Parker Solar Probe

  • Parker Solar Probe のサイトは こちら (ジョンズ・ホプキンス大学応用物理学研究所)

2018 年、NASA はこれまででいちばん太陽に近づくために、Parker Solar Probe (PSP) という探査機を打ち上げました ( 図 19 )。1958 年に太陽風の存在を理論的に予測した ( Parker, 1958 ) 他、太陽物理学に関する様々なアイデアを創出した科学者 E. N. パーカーの名前が付いています。

図 19   宇宙環境の耐久試験に備える Parker Solar Probe:提供 NASA/Johns Hopkins APL/Ed Whitman.

PSP は高性能の望遠鏡を持っていませんが、太陽風を直に捉えて測定を行う装置や、磁場を測る装置などを持っています。楕円軌道を描いて太陽を周りつつ、1 周期に 1 回、太陽に接近します。

2020 年 9 月 27 日の接近では、太陽表面から太陽半径の 20 倍程度の距離 ( = 1400 万 km) まで到達しました。そのときの位置関係を 図 20 に示します。これは 図 10 に載せたコロナグラフ LASCO の視野内です。

図 20   2020 年 9 月 27 日の接近時の Parker Solar Probe の軌道と位置

太陽の表面近くからは常に陽子や電子、ヘリウム原子核などの物質が宇宙空間に向かって噴き出しています。その一部は地球にも降り注ぎます。これが太陽風と呼ばれる現象です。詳しくは記事「太陽風:常に噴き出すスプリンクラー」で説明しています。

PSP は 2025 年頃には太陽表面から太陽半径の 9 倍程度の距離 ( = 600 万 km) まで近づく予定です。太陽風が加速されている現場に飛び込んで観測を行います。

太陽風のモニタリング:DSCOVR

DSCOVR は 米国海洋大気庁 (NOAA) と NASA、米国空軍 (USAF) による共同ミッションです。2015 年に打ち上げられ、SOHO と同じようにラグランジュ点 (L1) の付近に投入されました。飛んでくる太陽風や磁場の観測と共に、地球の撮像観測も行っています。

NASA は太陽風観測目的でこれまでに WIND, ACE といった探査機もラグランジュ点に送り込んできました。DSCOVR は ACE の後継機として開発されました。

ラグランジュ点で太陽風や CME をモニタリングすれば、それらが実際に地球に到来する数十分から 1 時間前に観測し、警告することができます。

フレアのモニタリング:GOES

  • GOES-R シリーズのサイトは こちら (米国政府)

GOES シリーズは米国の静止気象衛星です。アメリカ大陸上空の東西に 1 機ずつ配置されています。5 から 10 年運用して古くなるごとに新しい衛星が打ち上げられていて、現在は 16 と 17 番目の機体が気象観測を行っています。

GOES は太陽フレアのモニタリングも行っています。GOES が観測した X 線の最大強度 (明るさ) によって、フレアの規模が分類されます。詳しくは記事「フレア:太陽大気で起こる爆発」で説明しています。

参考文献

引用した文献

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